2005年 12月 11日

二人展 秋葉 剛・原田俊介



期間: 2005/12/12~2005/12/17

<叙情的な記憶と叙事的な記憶>

私たちの行動や思考の根本にあるのは記憶ではないでしょうか。記憶には、長い間ずっと覚えているものもあれば、すぐに忘れてしまうものもあります。 その覚えている時間によって「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」と分ける事ができます。 感覚記憶は、視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚などの感覚の体験の記憶ですぐに忘れてしまう記憶だといわれています。 短期記憶は昨日のことから数週間ぐらい前までの短期間の記憶で、強く印象に残ったものの一部が長期記憶として保存されます。 長期記憶は長く保存される記憶で、その内容によってと「手続的記憶」「宣言的記憶」に分かれ、手続的記憶が自転車の乗り方などの身についた記憶なのに対し、宣言的記憶は言葉で説明できる記憶です。 宣言的記憶はさらに、「意味記憶」と「エピソード(出来事)記憶」に分かれ、前者が感情や情緒を伴わない記憶なのに対し後者は情緒や感情を伴う記憶で、『思い出』と称されるものです。 私たちが作品を作る手がかりにする記憶は、条件反射的な身体記憶や暗記や知識などの意味記憶ではなく『思い出』と称されるエピソード記憶に限定されます。私たちは、エピソード記憶には2つの種類があると考えています。 1つは、体験したことをありのままに記憶している『叙事的記憶』と、体験した事をその時の感情と共に、あるいは感情のほうをより強く覚えている『叙情的記憶』の2種類です。 私は、叙情的な記憶を手がかりに描き、原田は叙事的な記憶をテーマに作品を作っています。
私の作品は記憶の物語の絵です。それは、ドラマチックな物語ではなく日常的な日記のような物語です。個人な記憶ではありますが、多くの人が同じ思いを感じた事があり共感できる記憶でもあると思います。 画面にリズム的に配置されたモチーフは記憶の断片です。ばらばらなパズルをひとつずつはめ込み、徐々にその全貌が見えてくるように、記憶のワンピースをモチーフの中から見つけ、そこから連鎖するように絵の全貌が見えた時に何か共感するものを感じてもらえると思います。 描かれた記憶は鮮明なものではありません。作家の村上春樹氏は、「文章という不完全な容器に盛ることができるのは、不完全な記憶や不完全な思い出しかない」と書いています。私が記憶の絵を描く時も同じで、鮮明でくっきりと思い出せる記憶は思い出と呼ぶにはまだ生々しすぎて描くことができません。記憶が薄らぎ不完全になりかけた時、一歩一歩たどるようにして記憶紡ぎ出し、そして描くことができます。そうして描くことができた絵は、記憶の物語そのものになります。
私が叙情的な記憶をテーマにしているのに対して、原田は感情をまじえないありのままの記憶「叙事的な記憶」をテーマにしています。人の記憶はあいまいなところがあり、スキーマと矛盾した記憶は書き換えられてしまったり美化されてしまったりします。原田の作品は、そういった間違った記憶を否定し、リアルで完全な記憶を求めたものです。記憶の現状維持。そのために選ばれた素材は古着です。古着にはそれを使った人の生活が染み込んでいます。ペンキ職人の作業着には塗料が染み込み、営業マンのワイシャツにはシミひとつありません。喫煙者の服にはヤニの臭いや色が残り、女性の服には香水の臭いが染み込んでいます。そういった着ていた人の生活の記憶が染み込んでいる服はリアルで嘘の無い記憶そのものです。琥珀に閉じ込められた蚊が、白亜紀に生きた恐竜のリアルな記憶」を現代まで完璧な状態で保存し続けているように、アクリルで固められた服は後世まで完全な状態でそれを着ていた人の嘘の無いリアルな記憶を保存し続ける事でしょう。
感覚的で叙情的な記憶と、一切の干渉を許さない叙事的な記録としての記録としての記憶。
             不完全な記憶と完全な記憶
             やわらかい記憶と固い記憶
             湿った記憶と乾いた記憶
湿った感情をメロディーと呼び、乾いた感情をリズムと呼ぶ五木寛之氏の言葉を引用させてもらえば、それは、メロディーの記憶とリズムの記憶でもあります。
いろいろな言葉を使って、2つの記憶の扱い方を比較対比する事ができますが、共通しているのはどちらも事実な記憶だという事です。この展覧会で、多くの人の記憶をくすぐり、懐かしい思いを思い出す手伝いができればよいと考えています。


URL: http://www005.upp.so-net.ne.jp/SOL/EXHIBITION/2005/200512futari.htm


会場: GALERIE SOL
入場料: 無料
時間: 11:00~19:00
(~17:00 on last day)
休館日:
住所: 〒104-0061 東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F
TEL/FAX: 03-5537-6960 / 03-5537-6988
Email: g-sol@cg7.so-net.ne.jp
URL: http://www005.upp.so-net.ne.jp/SOL/
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by koso2.0 | 2005-12-11 21:29 | GALERIE SOL


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